「包茎は子どものうちに治すべきですか?」や「子どもが真性包茎だけど放置していいですか?」といったご相談を受けることがよくあります。
包茎は男性特有の問題であることから、多くの母親にとってどのように対応すべきなのか分からず、不安になってしまうようです。
そこでこの記事では、子どもの包茎治療の経験もある医師が「包茎と子ども」について、親御さんが知っておくべきことを中心に、分かりやすく解説します。
この記事の目次
包茎とは
包茎(ほうけい)とは、ペニスを覆っている包皮の先端部分である包皮口が狭いために、包皮をむくことができず、亀頭を露出できない状態のことです。
赤ちゃんから幼児期は、基本的に包茎であることが正常と言えます。包皮は、体が成長するのに連れて自然にむける、あるいは、自分の手によって無理なくむくことが可能になっていきます。
包皮がむける時期は個人差があるものの、概ね12歳から15歳の思春期頃が一般的です。つまり、思春期を終える頃までは包茎であることが自然な状態と言えます。
このことから、特段の事情がないならば、子どものうちに包茎かどうかや、該当する包茎の種類を判断するのは時期尚早と考えることもできます。
一方で、すべての子どもに対して、包茎は自然経過を見ればよいとは限りません。例えば、排尿時に包皮が膨らんでしまう症状や、ペニスが炎症を繰り返すような場合は治療した方がいい可能性があります。
従って、子どもの包茎については、トラブルがないようであれば、原則として積極的な治療は必要ないと言えます。
包茎の種類
包茎は子どものうちに判断できないことがほとんどですが、以下3つの種類があることを知っておいてください。
- 真性包茎
- カントン包茎
- 仮性包茎
それぞれについて解説します。
真性包茎
「真性包茎」は子どもに多く見られる包茎の種類です。真性包茎は、包皮がまったく剝けない状態のことですが、成長するに連れて、包皮と亀頭表面が徐々に分離していってむけるようになります。
成人してからも真性包茎だと、勃起の有無に関わらず、常に包皮が亀頭を覆っているため、亀頭の成長が妨げられ、先細りペニスや短小(ペニスサイズが小さい)になったり、さらには不衛生になって感染症にかかりやすくなったりすることがあります。
真性包茎は、正常な性行為にも支障をきたす可能性があることから、成人以降はとくに早急に治療すべき包茎のひとつと言えます。
カントン包茎
「カントン包茎」は、包皮口が極端に狭いことで、包皮をむいた際に亀頭や陰茎が窮屈になってしまう状態のことで、子どものうちはほとんど自覚症状はありません。
子どものうちに無理矢理に包皮をむいてしまうと、包皮の口の部分が亀頭の下の部分の陰茎に嵌まり込んで、元の様に被せることが困難になるばかりか、血流が悪化して、ペニスが腫れがってしまい、強い痛みを訴える可能性があります。
カントン包茎は、成人してからも鬱血や裂傷、さらには亀頭の壊死といったリスクを伴うため、どの包茎よりも早期に治療すべきでしょう。
仮性包茎
「仮性包茎」は、基本的には包皮が亀頭を覆っているものの、包皮をむいて亀頭を露出できる状態です。
日本人男性のおおよそ60~70%が仮性包茎とされているため、大半の子どもは仮性包茎に該当すると思ってよいでしょう。
子どものうちに完全に包皮をむくことは難しいかもしれませんが、生殖器が発達する15歳くらいまでには自然に、または自力でむけるようになります。
子どもの包茎治療を検討すべきケース
包茎は子どものうちに治療する必要はほとんどないと言えますが、以下のようなケースにおいては治療を検討することをおすすめします。
- 排尿時のトラブル
- 亀頭包皮炎
- 尿路感染
それぞれについて解説します。
排尿時のトラブル
「排尿時のトラブル」がある場合は、治療を検討しましょう。例えば、包皮口が狭いことで排尿時にペニスの先端が風船のように膨らんでしまう「バルーニング」や、排尿時に尿が周囲に飛び散る「尿線不定」といった症状が該当します。
これらが子どもの健康状態を悪くする原因になることは考えにくいものの、成長しても解消されない場合は、包茎治療の対象になるでしょう。
亀頭包皮炎
「亀頭包皮炎」は、子どもであっても包茎治療の対象になる可能性があります。亀頭包皮炎とは、包皮や亀頭周辺で痛みや痒み、そして赤みを伴った炎症が起きる症状です。
包皮が亀頭を覆っていることで「恥垢(ちこう)」と呼ばれる汗や尿、皮脂といった垢が溜まりやすくなり、そこに細菌などが繫殖して炎症を引き起こします。
亀頭包皮炎は繰り返し発症するかもしれません。とくに、包茎状態にある子どものうちはその可能性が高く、何度も繰り返していると包皮が瘢痕化する「閉塞性乾燥性亀頭炎」につながる恐れがあります。
尿路感染
「尿路感染」は、包茎の子どもがかかりやすい症状とされています。尿路感染とは、尿路に細菌が侵入することで腎臓や膀胱などで炎症を起こす症状です。
包茎の場合、包茎でない場合と比べて尿路感染を起こす頻度が高いと指摘する報告もありますが、1歳を超えると尿路感染のリスクは低下することから過度な心配は不要と言われています。
リスクのひとつとして尿路感染があることを知っておいてください。
いつ子どもの包茎治療を検討すべきか
子どもの包茎は「思春期を超えてから」治療しても遅くはありません。そもそも、子どもの包茎治療は明確な年齢の基準がある訳ではなく、また思春期を超えるまでは自然経過を見るのが一般的です。
仮に、親が子どものペニスを見て包茎だと思っても、子どものペニスはこれから成長するということを忘れてはいけません。
また、これから成長するペニスの包皮をどの程度切除するのかは医師であっても判断が困難とされていることから、思春期前の積極的な包茎治療はおすすめできません。
子どもの包茎については、あまり深刻に悩まないようにし、中学生か高校生くらいまでは自然経過を見るようになさってください。
同時に、子どものうちからペニスを清潔に保つことの大切さや、入浴時における洗浄法などを教えてあげるようにしましょう。
子どもの包茎を治す方法
子どもの包茎を治す方法として以下2つの方法があることを知っておいてください。
- 包皮翻転(ほんてん)指導
- 包茎手術
それぞれの方法について解説します。
包皮翻転(ほんてん)指導
「包皮翻転(ほんてん)指導」とは、少量のステロイド剤が含まれる軟膏を、包皮と亀頭の接着部分に塗りつつ、包皮を手でむくことを1~2週間繰り返す方法です。
少量のステロイド剤が入った軟膏が、包皮を広げる効果があるとされており、亀頭と包皮の癒着を剥がし、徐々に包皮がむけるようになる仕組みです。
初めの頃は痛みや出血を伴う可能性があること、そして一定期間継続する必要があることが、子どもにとって辛い体験になる可能性は否定できません。
包茎手術
子どもの包茎を治す方法には「包茎手術」があります。余剰な包皮を切除することで、常時亀頭を露出できる状態にします。
確実性や即効性などに優れているものの、子どものうちは心身の負担が否定できず、適応性を慎重に判断する必要があるでしょう。
まとめ
包茎は子どものうちはごく自然な状態と考えましょう。また、子どものうちは真性包茎であっても、思春期にかけて徐々にむけてくるのがほとんどです。
従って、親の心配だけを理由に、子どものうちから積極的な包茎手術はおすすめできません。
どうしても気になるようであれば、まずは一度医師のカウンセリングを受けることをおすすめします。
この記事の監修医師
葉山芳貴
経歴
平成14年 聖マリアンナ医科大学 卒業
平成20年 大阪医科大学 大学院 卒業
平成22年 大手美容形成外科 院長 就任
平成27年 メンズサポートクリニック開設
平成28年 メンズサポートクリニック新宿 院長就任
平成28年 医療法人清佑会 理事長 就任
資格
医師免許(医籍登録番号:453182)
保険医登録(保険医登録番号:阪医52752)
鳥羽洋輔
経歴
平成31年 札幌医科大学医学部医学科 卒業
令和3年 美容皮膚科クリニック 勤務
令和4年 MSクリニック 勤務
資格
美容外科医
医師免許(医籍登録番号:559547)