【医師監修】幹細胞は若返りの効果がある？幹細胞治療を医師が解説

昨今、若返り効果があるとして注目されている「幹細胞」をご存じでしょうか？幹細胞はヒトの体内に存在する細胞で、傷ついた組織を修復したり、増加させたりする様々な働きがあります。

そんな幹細胞を活用すれば、あらゆる老化現象を改善または予防できるだけでなく、ED（勃起不全）や脱毛症、糖尿病といった症状にも効果があることがわかっています。

この記事では、いま注目されている「幹細胞による若返り」について、仕組みや具体的な治療法など、初心者にもわかりやすく医師が解説します。

幹細胞とは

幹細胞とは、おおよそ270種類に及ぶヒトの体内に存在する細胞の「元となる細胞」のことです。幹細胞には「自己複製能」と「分化能」というふたつの能力があります。

幹細胞が持つ「自己複製能」とは、自分自身と同じ細胞を複製する能力であるのに対し、「分化能」はひとつの幹細胞が異なる種類の細胞に分化する能力で、これらの能力によって血液や骨、皮膚、筋肉などが生成されます。

幹細胞は「多能性幹細胞」と「組織幹細胞」のふたつに大きく分けられます。多能性幹細胞は体の中にある様々な組織幹細胞を作り出せる一方、組織幹細胞は血液や神経といった特定の細胞を作ることに特化しています。

しかし、研究の結果、ヒト由来の歯髄・脂肪・臍帯（さいたい）・骨髄などに存在する組織幹細胞（間葉系幹細胞）には、軟骨や脂肪、神経といった細胞に分化する「多分化能」があることがわかりました。

このことから、歯髄や脂肪、さらに臍帯由来の幹細胞を活用することで、難病治療だけでなく、アンチエイジング、若返りといった予防治療でも効果があるとされています。

幹細胞による主な若返り効果

幹細胞による主な若返り効果としては、主に以下のようなことが挙げられます。

• 線維芽細胞の増加
• 肌質改善
• 病気予防

線維芽細胞の増加

幹細胞の若返り効果のひとつが「線維芽細胞の増加」です。肌の奥底にある真皮層の幹細胞には、線維芽細胞を生成する役割があり、この線維芽細胞が肌の弾力を保つコラーゲンやエラスチン、そして肌の潤いを保つヒアルロン酸を生成しています。

肌の衰えは線維芽細胞の減少によって起こるため、幹細胞から分泌される生理活性物質によって、線維芽細胞が増加し、肌の衰えを防止、さらには改善できる仕組みです。

肌質改善

幹細胞の若返り効果として「肌質改善」があります。シミや小じわ、肌のハリ不足、毛穴の開き、ほうれい線といった様々な「肌の老化」の原因であるコラーゲンの減少を抑えることで肌質改善につながります。

幹細胞は、先述した線維芽細胞を増加させる効果があり、このことがコラーゲンの減少だけでなく、新たなコラーゲン生成を促進し、肌質改善につながります。

病気予防

幹細胞の若返り効果として「病気予防」も挙げられます。様々な病気の原因である痛んだ幹細胞や老化した幹細胞を修復することで、症状の改善や予防の効果が得られるとされています。

具体的には、糖尿病や関節炎、肝機能障害、パーキンソン病、そして末梢神経障害など、加齢と共に生じやすい様々な病気の改善および予防に有用と考えられています。

幹細胞は若返りに効果があるとされる理由

幹細胞が若返りに効果があるとされる理由は以下の通りです。

• 自己複製能と分化能による細胞の活性化
• 細胞の修復能力

先述したように、幹細胞には自己複製能と分化能という能力があり、これにより血液や皮膚、さらに筋肉などを生成する細胞が活性化されるようになります。

また、傷ついた細胞を修復する能力もあり、痛みを伴う症状や、不調を引き起こす原因を改善できます。

この結果、皮膚の老化や眼機能低下、慢性的な疲労、毛髪の減少といった「老化現象」が改善または予防され、結果として若返りが実現するということです。

幹細胞が若返りを補助する仕組み

幹細胞が若返りを補助する仕組みは、幹細胞が繊維芽細胞の減少を食い止め、さらには増加させることが大きく影響しています。

とりわけ、老化の症状として自覚しやすい「肌質」において顕著です。幹細胞は肌の三大要素と呼ばれるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸を生成する繊維芽細胞を作るのに役立ちます。

幹細胞治療と幹細胞培養上清液療法の違い

幹細胞が若返りに効果があることが分かったと思いますが、混同しがちなのが「幹細胞治療と幹細胞培養上清液療法の違い」です。

幹細胞治療と幹細胞培養上清液療法の違いは「幹細胞が含まれているか否か」です。幹細胞治療は幹細胞を含んでいるのに対し、幹細胞培養上清液療法は幹細胞を含まず、あくまでも幹細胞を元に培養して生成された生理活性物質を使用したものです。

幹細胞治療は、厚生労働省による認可を受けた「特定認定再生医療等委員会」が許可したクリニックでしか治療できず、なおかつその治療費は数百万円から数千万円と言われています。

一方、幹細胞培養上清液療法は幹細胞が含まれていないものの、培養の段階で分泌される100種類以上の生理活性物質（成長因子など）を使用するため、若返りの効果を得ながら、幹細胞治療よりもコストが低いことが特徴です。

従って、昨今の幹細胞治療や再生医療と呼ばれるものの多くは、実質的には幹細胞培養上清液を使った治療を指していると思ってよいでしょう。

幹細胞培養上清液療法の種類

若返りにも効果がある幹細胞培養上清液療法の種類について解説します。

幹細胞培養上清液点滴療法

幹細胞培養上清液点滴療法とは、点滴により幹細胞培養上清液を投与する方法です。静脈から投与することで全身にくまなく行き渡り、若返り効果を得やすいとされています。

幹細胞培養上清液局所投与療法

幹細胞培養上清液局所投与療法とは、注射によって幹細胞培養上清液を投与する方法です。関節や皮膚といった特定部位に投与したい場合に有効とされています。

幹細胞培養上清液点滴と局所投与の併用

点滴療法と局所投与の併用法です。皮膚に対して最も効果を得やすい方法とされており、若返りに関すること以外にも様々な症状で効果を得やすいでしょう。

幹細胞化粧品（幹細胞コスメ）

幹細胞の若返り効果が見込まれるものとして「幹細胞化粧品（幹細胞コスメ）」もあります。ヒト由来の幹細胞培養上清液が含有されているローションやクリーム、化粧水などがあり、スキンケアで用いられます。

幹細胞の若返り効果に関するよくある質問と回答

幹細胞の若返りに関するよくある質問を紹介します。