加齢とともに疲れやすくなったり、やる気が起きなかったり、さらには性欲が落ちてきたといったことに悩んでいる男性は多いと思います。
これらの症状は40代以降の男性に多く見られるもので、男性ホルモンであるテストステロンの分泌量が減少することが原因で起きるとされています。
減少してしまった男性ホルモンを増やすことは難しいのでしょうか?この記事では、男性ホルモンの減少が主な原因となる、「男性更年期障害」の治療経験豊富な医師が、男性ホルモンを増やす方法について分かりやすく解説します。
この記事の目次
テストステロンとは
男性ホルモンの一種であるテストステロンを増やす方法を知る前に、まずはテストステロンがどのようなホルモンであるかについて理解しましょう。
テストステロンについて理解することで、なぜ男性ホルモンを増やすことが良いとされているのか、どうすれば増やせるのか、といったことを理解しやすくなります。
テストステロンの働き
テストステロンに関する多くの研究を発表している、帝京大学泌尿器科学講座の堀江氏の論文(*1)によれば、成人男性におけるテストステロンの働きは主に以下の内容が挙げられます。
- 筋肉の量と強度の保持
- 内臓脂肪の減少(メタボ予防)
- 造血作用
- 性機能や性衝動の維持
- 認知機能の向上
- 健康な精神の維持
このように、テストステロンは脳、身体、精神、そして性機能といった様々な要素に働きかけます。
逆を言えば、テストステロンが減少すると、心身に様々な不調が生じるのです。
テストステロンが分泌されるメカニズム
男性の場合、テストステロンの大半は精巣で産生されます。産生されたテストステロンは血液によって全身に運ばれ、筋肉や骨、脳、そして性器などに作用するのです。
テストステロンが産出される起点となるのが、脳の視床下部から分泌される「性腺刺激ホルモン放出ホルモン」で、「GnRH(Gonadotropin Releasing Hormone)」とも呼ばれます。
GnRHは、脳下垂体前葉からの「黄体形成ホルモン(LH)」と「卵胞刺激ホルモン(FSH)」の分泌を促します。
このうち、黄体形成ホルモン(LH)が、精巣のライディッヒ細胞におけるテストステロンの合成を促します。これが、テストステロン産生のメカニズムです。
このメカニズムは30歳頃までは正常に機能するとされていますが、加齢やストレスといったことが原因となり、徐々にテストステロンの分泌量は減少します。
遊離型テストステロン(フリーテストステロン)の基準値
テストステロンはいくつかの形態に分類されますが、最も重要とされているのが「遊離型テストステロン(フリーテストステロン)」です。
遊離型テストステロンは、アルブミンや性ホルモン結合グロブリンといったタンパク質と結合していないテストステロンを指し、生物学的活性(細胞に直接作用する働き)が強いとされています。
加えて、遊離型テストステロンは加齢に伴って有意な減少を示すことから、総テストステロン値よりも遊離型テストステロン値の方が重要と考えられています。
「遊離型テストステロン値」は以下のような(*2)基準になっており、正常値の下限(20歳代のXbar-2SD)とされる「7.5pg/mL」(*99)を下回ると、テストステロンが不足していると判断されます。
20歳代 | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 60歳代 | 70歳代 | |
---|---|---|---|---|---|---|
n | 294 | 287 | 235 | 169 | 120 | 38 |
Xbar+2SD | 27.9 | 23.1 | 21.6 | 18.4 | 16.7 | 13.8 |
Xbar | 16.8 | 14.3 | 13.7 | 12.0 | 10.3 | 8.5 |
Xbar-2SD | 8.5 | 7.6 | 7.7 | 6.9 | 5.4 | 4.5 |
(*99) 2022年12月のガイドライン改訂でフリーテストステロンの基準値が8.5pg/mlから7.5pg/mlに引き下げられました。
男性ホルモンを増やす方法
男性ホルモンのテストステロンを増やす方法は、ご自身でできる「生活習慣の改善」と、医療機関における「男性ホルモン補充療法」の2つが有効とされています。
具体的な方法についてそれぞれ解説します。
有酸素運動
男性ホルモンを増やす方法としておすすめなのが「有酸素運動」です。2023年、第23回日本抗加齢医学会総会において、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の前田氏が発表した「有酸素運動とテストステロン」では「テストステロン濃度の増加には有酸素性運動が、とくに少し強度が高めの早歩きや軽いジョギングなどの運動が有用であることが示唆された(*3)」と紹介しています。
また、筋力トレーニングも男性機能の向上に有効であることから、運動は男性ホルモンを増やす方法として適していると言えます。
食事
「食事」では、タンパク質、亜鉛、そしてミネラルの摂取がポイントとなります。具体的には、肉や魚、卵といった動物由来の食材でタンパク質を、牡蠣や豚レバーから亜鉛、そして納豆や海藻類からビタミンやミネラルを摂取することが大切です。
前出の堀江氏によると、古来から山芋や人参、そしてタマネギの摂取も有効(*4)とされていることから、これらの食材を中心に、バランス良く栄養を摂取しましょう。
十分な睡眠
男性ホルモンを増やす方法では「十分な睡眠」も大切です。とある研究(*5)によると、「5時間しか睡眠しない人では、10時間睡眠している人と比べてテストステロンの量が10~15%少ない」ことが分かっています。
このことから、睡眠時間が短いことは男性ホルモンの産生にとって好ましくないと言えます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023(*6)」でも、1日6時間以上の睡眠が推奨されていますので参考にしてください。
日光浴
「日光浴」も、男性ホルモンを増やす方法として有用と考えられています。日光浴を行うことでビタミンDの合成が活発化します(*7)が、このビタミンDには、テストステロンの産生量を増やす効果があります(*8)。
目安として1日に15~20分、太陽の光を浴びることに取り組んでみましょう。
男性ホルモン補充療法
男性ホルモンを増やす方法としては、医療機関における「男性ホルモン補充療法」もあります。これは、血液検査によって遊離型テストステロンの血中濃度を測定し、8.5pg/mLを下回っていた場合に、注射や塗布薬などを用いて男性ホルモンを補充する方法です。
本治療の実施にはさまざまな条件がありますので、詳しく専門の各医療機関にてご相談ください。
テストステロンを増やそうとする際に気を付けること
男性ホルモンを増やす方法の実践においては、以下のことに気を付けてください。
- メチルテストステロン含有のサプリメント
- 過度な筋トレやダイエット
昨今、インターネットを中心にして手軽にテストステロンを増やせることをうたったサプリメントが流通しています。
その一部には、肝臓への毒性が指摘される「メチルテストステロン」や、日本国内未承認の「Testosterone Undecanoate」などがあります。
これらは安全性に疑問があるだけでなく、その効果についても疑わしいことから使用は控えてください。
そして「過度な筋トレやダイエット」にも注意しましょう。男性ホルモンを増やすには、筋トレなどの運動が効果的と言われていますが、過度になると逆効果になってしまいます。
よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック院長の奥井氏によると、1日7km程度走る人の遊離型テストステロン値は基準を大きく下回り、なおかつ医療機関での受診日数も多かった、とのことです(*9)。
つまり、運動を「頑張り過ぎる」ことによって、かえってテストステロンの量が減り、健康を損ねてしまうのです。
男性ホルモンを増やしたいからといって、サプリメントに頼ったり、運動を頑張り過ぎたりすることがないよう注意しましょう。
まとめ
男性ホルモンであるテストステロンを増やす方法は、運動や食事といった生活習慣の改善が基本となります。
日常生活の改善に限界を感じる場合は、医療機関にて男性ホルモン補充療法を受ける選択肢もありますので、まずは一度医師に相談することをおすすめします。
MSクリニックでは、包茎手術・早漏治療・長茎術・亀頭増大術などから、薄毛治療、男性更年期治療など、男性のさまざまなお悩みに向き合うメンズクリニックです。
医師をはじめ、看護師も全員が男性ですので、どうぞお気軽にご来院ください。
この記事の監修医師
総院長、医学博士 葉山芳貴
経歴
- 平成14年
- 聖マリアンナ医科大学 卒業
- 平成20年
- 大阪医科大学 大学院 卒業
- 平成22年
- 大手美容形成外科 院長 就任
- 平成27年
- メンズサポートクリニック開設
- 平成28年
- メンズサポートクリニック新宿 院長就任
- 平成28年
- 医療法人清佑会 理事長 就任
資格
医師免許(医籍登録番号:453182)
保険医登録(保険医登録番号:阪医52752)
新宿院 院長 鳥羽洋輔
経歴
- 平成31年
- 札幌医科大学医学部医学科 卒業
- 令和3年
- 美容皮膚科クリニック 勤務
- 令和4年
- MSクリニック 勤務
資格
美容外科医
医師免許(医籍登録番号:559547)