「クラミジア」という性感染症(性病)の名前を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。クラミジアは、日本国内において最も多い性感染症とされており、とりわけ性に活発な若年層に多く見られます。
性器クラミジア感染症は、感染症法という法律により、淋菌感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマとともに、国内でよくみられる性感染症として「五類感染症」に指定されています。
この記事では、男性が感染した場合の症状や伝染の経路など、クラミジアに関する正しい知識を医師が分かりやすく解説します。
この記事の目次
クラミジアとは
クラミジアは「クラミジア・トラコマティス(Chlamydia Trachomatis)」と呼ばれる細菌に感染することが原因で発症する性感染症です。
主に性行為を通じて、性器(尿道)や肛門、直腸、さらには咽頭(のど)などに細菌が感染することにより、様々な症状を引き起こします。
男性がクラミジアに感染すると、1~3週間の潜伏期間(症状のない期間)をおいて、軽度な排尿痛や尿道の不快感などを生じます。この状態を放置すると尿道炎や精巣上体炎などを招き、場合によっては男性不妊(男性側が原因となる不妊症)の原因となることもあります。
女性の場合、おりものの増加や不正出血といった症状に加えて、子宮頸管炎や子宮内膜症、骨盤内炎症疾患(PID)などを発症する可能性があります。
一方、クラミジアの感染では「自覚症状に乏しいケースが多い」ことも特徴の一つです。自覚症状がないために感染していることに気が付かず、性行為などによって感染を拡大させてしまう恐れがありますので注意が必要です。
事実、厚生労働省がまとめている「性感染症の定点当たり報告数(定点医療機関からの報告数を定点数で割った値)」のデータ(*)を見ると、直近3年(2019年~2021年)におけるクラミジアの感染者数は、男女とも幅広い年齢層にわたって増加傾向にあります。
加えて、コンドームなどを使用しない(感染予防対策を講じていない)性行為におけるクラミジア感染の確率は30~50%と言われていますので、正しい対策を取らなければ高い確率で感染してしまう病原体であるといえます。
このように、クラミジアは感染力が強い一方で、自覚症状を欠くケースも多いため、無自覚に感染を広げてしまいやすい性感染症であることは認識しておきましょう。
クラミジアの主な症状
男性がクラミジアに感染すると、以下のような症状を感じる場合があります。
- 尿道の不快感
- 排尿痛
- 尿道から膿が出る
- 精巣上体の腫れ
それぞれの症状について解説します。
尿道の不快感
男性がクラミジアに感染した場合の症状として代表的なものが「尿道の不快感」です。この「不快感」とは、具体的には尿道の痒み(尿道掻痒感)や熱っぽさ(排尿時灼熱感)を指します。
これ以外にも、尿道にムズムズするような違和感が生じる場合もあります。いずれの症状も軽いものと思いがちですが、あまり続くようだったり、悪くなっていくような場合には尿道炎の可能性も考えなくてはなりません。
排尿痛
「排尿痛」も、男性がクラミジアに感染した場合によくみられる症状です。排尿のたびに痛みを感じたり、排尿時にしみるような違和感が生じるような場合には、医療機関を受診するようにしましょう。
尿道から膿が出る
男性のクラミジア感染では、「尿道から膿が出る」場合もあります。尿道口から透明または乳白色で、粘り気の少ないサラサラした分泌物(膿)が出たり、これによって下着が汚れるといった症状が出現します。
精巣上体の腫れ
「精巣上体の腫れ」も、男性のクラミジア感染における症状の一つです。精巣上体は、別名副睾丸とも呼ばれますが、その名の通り精巣の上部にあって精子の貯留や輸送を担う器官です。クラミジア感染を放置してしまうと、尿道から侵入した細菌がこの精巣上体へと入り込み、炎症を起こして腫れや痛みを生じます。後述する「精巣上体炎」の状態です。
睾丸全体が大きく腫れ上がって激しい痛みが出たり、高熱が出るような場合には、精巣上体炎を起こしている可能性がありますので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
クラミジアの感染経路
クラミジアの感染経路は、主に以下の2つが考えられます。
- 性行為
- 性交類似行為
それぞれ解説します。
性行為
クラミジアは「性行為」によって感染します。具体的には、セックス(膣性交)、アナルセックス(肛門性交)、そしてオーラルセックス(フェラチオやクンニリングス)などが挙げられます。
性交類似行為
「性交類似行為」も感染経路となる可能性があります。「性交類似行為」とは、具体的にはディープキスやパートナーとの手淫(手を使った性交を連想させるような行為)など、粘膜や分泌液への接触が生じる行為全般を指します。
一方、パートナーと一緒にお風呂に入ることや手をつなぐこと、さらには同じタオルを使用するといったことでは、クラミジアの伝染は起こらないといわれています。
クラミジアを放置するとどうなる
男性がクラミジア感染を放置すると、以下に挙げるような疾患(および様々な不具合)を引き起こす可能性があります。
- 精巣上体炎(副睾丸炎)
- 前立腺炎
- 無精子症
- 不妊症
- パートナーへの感染拡大
欧州疾病対策・予防センター(European Centre for Disease Prevention and Control*)によると、クラミジアに感染しても無症状である確率は、男性は50%、女性は70%と報告されています。
つまり、男性がクラミジアに感染しても、その半数は無症状であるが故に放置してしまう可能性があるということです。
クラミジアに感染してしまうような行為(コンドームを付けない性行為や不特定多数との性行為など)に心当たりがある場合には、自覚症状の有無を問わず、定期的に検査を受けるようにしましょう。
クラミジアの治療法
クラミジアの治療としては、抗菌薬(抗生物質)を1週間程度内服することが基本となります。
治療にあたり、まずは尿検査やうがい液検査により、クラミジア感染の有無を確認します。検査によって実際にクラミジアへの感染が確認された場合には、医師の判断のもと、アジスロマイシンやレボフロキサシンといった抗菌薬が処方されます。
クラミジア感染に対する治療は、保険適用となります。ただし、性病治療を標榜するクリニックは自由診療のみを取り扱っている施設も多いため、保険診療の取り扱いの有無については受診前に電話などで確認するようにしましょう。
クラミジアに対する検査および治療について、保険適用の場合にかかる費用としては、検査に2,000~3,000円、内服薬(抗生剤1週間分)に1,000円~2,000円が目安となります。
クラミジア感染の予防対策
クラミジア感染を予防するためには、以下に挙げる対策を心がけましょう。
- 性行為ではコンドームを使用する
- 不特定多数の相手との性行為を避ける
- 定期的に検査を受ける
- 包茎手術を受ける
WHOは、クラミジアの感染予防策として「一貫してコンドームを適切に使用すること」を推奨しています(*)。
現状、クラミジア感染を予防できるワクチンは存在しません。クラミジアに感染することを防ぐため、まずはコンドームを正しく使用することを心がけるようにしましょう。
加えて、亀頭が皮に覆われている状態、いわゆる包茎は性感染症(性病)のリスクを高めるといわれています。性感染症のみならず、恥垢の貯留や陰毛の巻き込みなど、包茎があることによって陰茎は不衛生な状態となりやすいため、包茎手術は大いに勧められる治療の一つです。
無症状でも要注意
先述した通り、クラミジアに感染した男性のおよそ半数は自覚症状がない(無症状)といわれています。
ここで注意すべきなのは、無症状であるからといってクラミジアの伝染リスクが低いわけではない、ということです。その時点では症状が出ていなくとも、潜伏期間を経て様々な症状が発生する可能性は否定できませんし、何より性行為のお相手にクラミジアを伝染させてしまい、場合によっては不妊症の原因を作ってしまう可能性もあるのです。
また、同じ理由から、クラミジアの治療中に症状が出ていないとしても、自己判断で性行為を再開することは厳に慎まなければなりません。
クラミジアの完治には、抗菌薬の内服開始から1〜4週間かかると言われています。症状の有無に関係なく、再検査で陰性が確認できるまでは、性行為や性交類似行為は控えるようにしましょう。
まとめ
男性がクラミジアに感染すると、尿道の痛みや痒みなどの症状が出現します。
さらに、感染を放置していると、尿道炎や精巣上体炎(副睾丸炎)、さらには男性不妊につながるリスクがあります。
クラミジアに感染してしまうような行為に心当たりがある場合は、症状の有無を問わず、無自覚に感染を広げてしまう前に医療機関で検査を受けるようにすると良いでしょう。
MSクリニックでは、ED治療を始め、包茎手術・早漏治療・長茎術・亀頭増大術などから、薄毛治療、男性更年期治療など、男性のさまざまなお悩みに向き合うメンズクリニックです。
医師をはじめ、看護師も全員が男性ですので、どうぞお気軽にご来院ください。
この記事の監修医師
葉山芳貴
経歴
平成14年 聖マリアンナ医科大学 卒業
平成20年 大阪医科大学 大学院 卒業
平成22年 大手美容形成外科 院長 就任
平成27年 メンズサポートクリニック開設
平成28年 メンズサポートクリニック新宿 院長就任
平成28年 医療法人清佑会 理事長 就任
資格
医師免許(医籍登録番号:453182)
保険医登録(保険医登録番号:阪医52752)
鳥羽洋輔
経歴
平成31年 札幌医科大学医学部医学科 卒業
令和3年 美容皮膚科クリニック 勤務
令和4年 MSクリニック 勤務
資格
美容外科医
医師免許(医籍登録番号:559547)